補足
対象読者:自治体観光部門、DMO、宿泊・体験・交通事業者、インバウンド施策担当者。想定読了時間:8〜10分。最終更新:2026-05-27。
TL;DR
インバウンドのジャーニーマップは、旅前・旅中・旅後の接点を整理し、どの段階で誰が何のデータを持つかを可視化するための実務ツールです。
旅前:検索、比較、予約、問い合わせが中心。
旅中:移動、チェックイン、決済、体験、トラブル対応が中心。
旅後:口コミ、再訪、CRM、効果測定が中心。
インバウンドのジャーニーマップとは
ジャーニーマップは、旅行者の行動を時系列に並べるだけでは不十分です。観光 DX では、接点、KPI、システム、データ、同意の5観点をセットで見る必要があります。
1. フェーズ境界を先に決める
まず、旅前・旅中・旅後の境界を決めます。境界が曖昧なままだと、広告、予約、現地対応、口コミ施策が別々に運用され、どの施策が成果に効いたのか分からなくなります。
旅前:認知、比較、予約、問い合わせ、事前決済。
旅中:移動、チェックイン、滞在、体験、現地決済。
旅後:レビュー、再訪意向、CRM、アンケート、紹介。
2. 旅前:検索・比較・予約
旅前は、国・地域ごとに使う検索・予約プラットフォームが異なります。日本語サイトだけでなく、OTA、SNS、地図、動画、口コミ、旅行メディアの接点を整理します。
見る指標:検索流入、予約率、問い合わせ率、広告 ROAS、キャンセル率。
必要な仕組み:多言語ページ、予約導線、FAQ、事前案内、計測タグ。
典型課題:流入元は見えるが、現地消費や再訪につながっているか見えない。
3. 旅中:現地体験と例外対応
旅中は、移動、チェックイン、決済、体験予約、問い合わせ、トラブル対応が重なります。ここでの体験品質が口コミや再訪意向に直結します。
見る指標:チェックイン完了率、問い合わせ件数、現地消費、体験参加率。
必要な仕組み:多言語案内、チャット、決済、予約変更、緊急時連絡。
典型課題:交通遅延、体調不良、予約変更などの例外対応が属人化する。
4. 旅後:口コミ・再訪・CRM
旅後は、レビュー投稿、アンケート、再訪提案、メール配信、SNS 共有が中心です。単発の来訪で終わらせず、次の訪問や紹介につなげる設計が必要です。
見る指標:レビュー率、評価点、再訪意向、メール反応率、紹介数。
必要な仕組み:CRM、アンケート、口コミ依頼、再訪キャンペーン。
典型課題:旅中の体験データと旅後のCRMがつながらない。
5. データ統合で先に決めること
フェーズ横断でデータをつなぐ場合、識別子、同意、権限、保持期間を先に決めます。個人情報を含む原票を集めるのではなく、目的に応じて集計・匿名化・権限分離することが重要です。
注意
旅前の広告ID、旅中の予約ID、旅後のメールアドレスを無理につなぐと、個人情報・外部送信・同意管理の論点が発生します。計測設計と法務確認は同時に進めてください。
6. 低予算で始める調査方法
ジャーニーマップは、高額な調査をしなくても始められます。まずは現場スタッフ、宿泊施設、案内所、体験事業者が知っている困りごとを集めます。旅行者の声は、口コミ、問い合わせ、アンケート、SNS、Googleマップのレビューからも拾えます。
問い合わせを見る:予約前に何で迷っているか、旅中に何で困っているかを分類する。
口コミを見る:良い点と悪い点を、交通、案内、食事、体験、接客に分ける。
現場に聞く:案内所、宿、飲食店、交通事業者に「よく聞かれる質問」を聞く。
小さく測る:QRアンケートや紙の一言カードで、困った場面を集める。
7. 施策に落とすときの考え方
マップを作った後は、接点ごとに「すぐ直せること」「システムが必要なこと」「地域合意が必要なこと」に分けます。すべてを同時に進めると止まりやすいため、旅行者の不安が大きく、現場負担も大きい接点から着手します。
すぐ直せること:案内文、地図、営業時間、FAQ、多言語表記、予約前メール。
システムが必要なこと:予約連携、チャット、決済、CRM、クーポン、分析。
地域合意が必要なこと:二次交通、回遊施策、広域パス、共通KPI、データ共有。
最後に、担当者、期限、測る数字を決めて小さく試す。
現場の目安
良いジャーニーマップは、きれいな図ではなく「明日から直す場所」が分かる図です。会議で眺めて終わらないよう、必ず担当者と期限を入れます。
8. 90分で作る実務テンプレート
旅前・旅中・旅後の接点を付箋で出す。
各接点の担当者、システム、保有データを並べる。
詰まっている箇所を、予約・移動・決済・問い合わせ・口コミに分ける。
改善施策を、すぐできるもの、システム連携が必要なもの、制度確認が必要なものに分ける。
