補足

対象読者:宿泊施設、DMO、自治体観光部門、観光 DX 担当者。想定読了時間:8〜10分。最終更新:2026-05-27。

TL;DR

宿泊業の KPI は、単独の数字ではなく関係性で読みます。ADR、OCC、RevPAR、TRevPAR、GOPPAR を分けると、値上げ、稼働、地域消費、利益のどこに課題があるか見えやすくなります。

図1:宿泊業 KPI ツリー。GOPPAR を頂点に、TRevPAR と RevPAR が並び、RevPAR は ADR × OCC に分解される。

ADR・OCC・RevPAR・TRevPAR・GOPPARの違いと計算式

宿泊業 KPI は、価格、稼働、客室売上、総収益、利益のどこを見る指標かで使い分けます。まずは次の定義を施設内でそろえることが重要です。

  • ADR(平均客室単価)=客室売上 ÷ 販売客室数。値上げ余地、客層、販売チャネルの変化を見ます。

  • OCC(客室稼働率)=販売客室数 ÷ 販売可能客室数。需要の強さと空室消化を見ます。

  • RevPAR(販売可能客室あたり客室売上)=ADR × OCC。単価と稼働のバランスを見ます。

  • TRevPAR(販売可能客室あたり総収益)=総売上 ÷ 販売可能客室数。飲食、体験、物販を含む収益力を見ます。

  • GOPPAR(販売可能客室あたり営業利益)=営業粗利益 ÷ 販売可能客室数。売上ではなく利益の質を見ます。

1. 基本指標の読み方

  • ADR:販売した客室の平均単価。値上げ余地や客層変化を見る。

  • OCC:販売可能客室に対する稼働率。需要量と在庫消化を見る。

  • RevPAR:販売可能客室あたり客室売上。ADR と OCC を掛け合わせて見る。

  • TRevPAR:客室以外の飲食・体験・物販も含めた総収益を見る。

  • GOPPAR:運営利益ベースで、売上ではなく利益の質を見る。

2. ADR × OCC で現状を分ける

図2:ADR × OCC 4 象限分析。各象限の戦略意味付け(強気価格 / 値下げで埋める / ベスト / ワースト)。

ADR と OCC は一緒に見ます。稼働が高くても単価が低ければ利益は伸びにくく、単価が高くても稼働が低ければ需要を取り逃がしている可能性があります。

  • 高 ADR・高 OCC:価格と需要が合っている。次は利益率と地域消費を見る。

  • 低 ADR・高 OCC:安く埋めている可能性。直販比率や価格設定を見直す。

  • 高 ADR・低 OCC:価格、露出、販売チャネル、需要期の読み違いを確認する。

  • 低 ADR・低 OCC:商品、販路、ターゲット、地域全体の誘客を見直す。

3. よくある読み違い

KPI は定義を揃えないと比較できません。月次、曜日、繁忙期、OTA 手数料、直販比率、客室以外の消費を混ぜると、判断を誤ります。

  • 単月の数字に反応しすぎる:イベント、天候、連休、団体予約の影響を分ける。

  • CompSet なしで絶対値を見る:競合群や地域平均との比較が必要。

  • OTA と直販を混ぜる:手数料、キャンセル率、顧客接点が異なる。

  • 客室売上だけを見る:体験、飲食、交通、物販の地域内消費を見落とす。

注意

観光統計や宿泊統計は、調査設計や集計範囲が変わることがあります。前年同月比だけで判断せず、定義変更、速報値・確報値、施設規模、地域区分を確認してください。

4. ダッシュボードの最小構成

図4:KPI ダッシュボード Mockup。2×3 ウィジェット(数値カード / バー / ゲージ / トレンド / 積上げ / ドーナツ)。

最初から大量の指標を並べるより、意思決定に使う指標だけに絞ります。宿泊施設なら、ADR、OCC、RevPAR、直販比率、キャンセル率、口コミ評価を最小構成にすると運用しやすくなります。

  • 毎日見る指標:予約数、在庫、価格、キャンセル、問い合わせ。

  • 週次で見る指標:ADR、OCC、RevPAR、チャネル別売上。

  • 月次で見る指標:GOPPAR、地域内消費、口コミ、再訪、施策別効果。

5. 数字を現場行動に変える

KPIは見るだけでは改善につながりません。数字が悪かったときに、誰が何を変えるかまで決めておく必要があります。たとえばRevPARが下がった場合でも、価格が低いのか、稼働が低いのか、キャンセルが多いのかで打ち手は変わります。

  • ADRが低い:割引しすぎ、プラン設計、販売チャネル、客層を確認する。

  • OCCが低い:露出、空室日、曜日、イベント、OTA掲載内容を確認する。

  • 直販比率が低い:公式サイト、予約導線、リピーター施策、口コミ導線を確認する。

  • GOPPARが低い:人件費、清掃費、手数料、食材費、外注費を確認する。

6. 会議で使える見方

地方の宿泊施設やDMOでは、専門用語の多いダッシュボードより、月1回の会議で説明できる形が重要です。数字は「増えた・減った」だけでなく、原因候補と次の行動をセットで確認します。

  1. 今月の数字を、前年同月、前月、目標の3つと比べる。

  2. 良かった日、悪かった日を、曜日、天気、イベント、広告、団体予約で見る。

  3. 次月に変えることを、価格、販路、在庫、案内、口コミ対応に分ける。

  4. 担当者と期限を決め、次回会議で同じ数字を見直す。

現場の目安

KPIは「責める数字」ではなく「早く気づく数字」です。スタッフが見て分かる言葉に置き換え、毎回同じ定義で見ることが大切です。

7. DOS で KPI を扱う意味

地域観光では、個社の KPI と地域全体の KPI がずれやすくなります。Destination OS では、宿泊、体験、交通、決済、口コミを分けて扱い、地域単位で施策効果を見られる状態を目指します。

図3:計算の流れの例。明細(左)→ 合計(中)→ 内訳分解(右)。

8. 導入前チェックリスト

  • ADR、OCC、RevPARの定義を施設内でそろえている。

  • OTA手数料、キャンセル、直販、客室外売上を分けて見られる。

  • 数字が変わったときに確認する担当者と会議体がある。

  • 地域全体で見る数字は、個社が特定されない集計値にしている。

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